VTuberのアバターといえばLive2D。第10弾「アバター制作依頼」では“依頼する”道を解説しましたが、この記事は“自分で作る”道の入門編です。
先に正直に言うと、Live2Dモデルの自作は簡単ではありません。イラスト・パーツ分け・リギング(動き )と、複数のスキルが必要で、初モデル完成までに数週間〜数ヶ月かかるのが普通です。それでも自作には、依頼にはない魅力があります。費用を抑えられること。修正も改造も自由なこと。そして、自分のモデルの仕組みを理解していると、運用中のトラブルにも強くなることです。
この記事のゴール:Live2D自作の全工程と必要なツールを把握し、「何から手をつければいいか」が分かる状態になること。
Part 1. 全体像——3つの工程
Live2Dモデル制作は、大きく3工程に分かれます。
- イラスト制作:キャラクターを描く。ただし“動かす前提”の描き方が必要
- パーツ分け:目・眉・口・髪・体などを、レイヤーごとに分解する
- リギング:Live2D Cubism Editorでパーツに動きをつけ、書き出す
時間配分の目安は、イラスト3:パーツ分け2:リギング5。リギングが最大の山です。イラストが描けない場合は、イラストだけ依頼してリギングを自分でやる「半自作」も現実的な選択肢です(費用は全部依頼するより大きく抑えられます)。
Part 2. 必要なもの
- ペイントソフト:PSD形式でレイヤー書き出しができるもの。CLIP STUDIO PAINT・Photoshopが定番
- Live2D Cubism Editor:本体。FREE版と PRO版があり、FREE版はパーツ数などに制限がある。まずFREE版で触り、本格制作でPRO版(サブスクリプション)に移るのが定石
- ペンタブレット:イラストを描くなら実質必須(→ 機材全般は第11弾)
- トラッキングソフト:完成後にモデルを動かすアプリ。Webカメラで顔を認識してモデルに反映する
- PC:Cubism Editorはそれなりにメモリを使う。目安16GB以上(→ 第11弾)
Part 3. イラスト制作——「動かす前提」の描き方
Live2D用イラストは、普通の一枚絵と決定的に違う点があります。動いたときに見える部分まで描く、という点です。
- 正面向きで描く:構図は基本、正面〜やや斜め。動きはリギングで作る
- パーツの“奥”まで描く:まばたきで隠れる目の奥、口を開けたときの口内、髪が揺れたときに見える首や肩。静止画では見えない部分が必要
- レイヤーを細かく分ける:描く段階からパーツ分けを意識する。「前髪」「後ろ髪」「左目」「右目」「眉」「口」「顔」「体」…最低でも30〜60レイヤー程度になる
- 左右対称に頼りすぎない:反転コピーで作った顔は、動かすと違和感が出やすい
キャラクターデザインそのものは第9弾「キャラクター設計」を。デザインの複雑さはそのままリギングの工数になります。初モデルは、装飾少なめ・髪のパーツ数控えめの「動かしやすいデザイン」を強くおすすめします。
Part 4. パーツ分けの勘所
パーツ分けの粒度が、モデルの動きの滑らかさを決めます。
- 目まわり:白目・瞳・ハイライト・まつげ・二重線を別レイヤーに。まばたきと視線移動の質が変わる
- 口:上唇・下唇・口内・歯を分ける。口の開閉(あいうえお)の表現力に直結
- 髪:前髪・横髪・後ろ髪の3ブロックが最低ライン。揺らしたい房はさらに分割
- 体:首・胴・腕を分ける。呼吸や体の傾きに使う
- 隠れる部分の描き足し:分割して見えた「絵が無い部分」を塗り足す。ここが一番地味で一番大事
完成したPSDは、レイヤー名を整理してからCubismに読み込みます。「レイヤー123」のままだと、リギング中に自分が迷子になります。
Part 5. リギング——最初に作る動き
Cubism Editorでの作業は多岐にわたりますが、初モデルで押さえるべき動きは優先順位があります。
- まばたき:これだけでも“生きて”見える。最優先
- 口の開閉(リップシンク):声と口が合う。配信の生命線
- 視線・顔のXY回転:顔が上下左右に動く。Live2Dらしさの核心
- 呼吸・体の揺れ:常時の微細な動き。止まって見えるのを防ぐ
- 髪揺れ(物理演算):頭の動きに合わせて髪が遅れて揺れる。一気に品質が上がる
- 表情差分:笑顔・驚き・照れなど。あとから追加できるので初版は2〜3個で十分
いきなり全部を高品質にしようとせず、「まばたき+口+顔XY」の3点をまず完成させて動かしてみる。動く感動が、残りの工程のモチベーションになります。
Part 6. 書き出しとトラッキング設定
リギングが終わったら、トラッキングソフト用にモデルを書き出します(moc3ファイルほか一式)。トラッキングソフト側では、感度・スムージングを調整します。
- Webカメラは目線の高さに:下からのアングルは認識精度が落ちる
- 照明は顔に均一に:逆光は認識の大敵(→ 環境づくりは第4弾)
- 感度調整:まばたきが敏感すぎる・口が開きっぱなしになる等は、ソフト側のパラメータ調整で直る
OBSへの取り込みと配信画面づくりは第4弾「セットアップ完全手順」、画面デザインは第16弾「ビジュアルデザイン」に続きます。
学習ロードマップ——挫折しない順番
独学の敵は「いきなり本番モデル」です。おすすめの順番はこうです。
- 公式チュートリアルのサンプルモデルを触る(数日):Editorの操作に慣れる
- 超シンプルな練習モデルを1体作る(1〜2週間):丸顔+シンプル髪の“練習台”。工程を一周体験する
- 本番モデルを作る(1〜2ヶ月):練習の反省を全部注ぎ込む
練習モデルを飛ばすと、本番イラストのパーツ分けミスにリギング段階で気づいて全部やり直し、という最悪のループに入りがちです。急がば回れ、です。
自作かリギングだけ依頼か
- 完全自作:費用最小・時間最大。絵が描ける人向け
- イラスト依頼+リギング自作:品質と費用のバランス型。リギングスキルは自分に残る
- 完全依頼:時間最小・費用最大(→ 第10弾)
活動を早く始めたいなら、初代は完全依頼かスマホアプリのアバター(第41弾)で始めて、2代目を自作する道もあります。自作スキルは急がなくても腐りません。
まとめ——山は高いが、登る価値はある
- 工程は「イラスト → パーツ分け → リギング」。リギングが最大の山
- イラストは“動かす前提”。隠れる部分まで描く
- 初モデルは動かしやすいシンプルなデザインで
- リギングは「まばたき・口・顔XY」の3点から
- 練習モデルを1体挟むと挫折率が激減する
Live2D自作チェックリスト
- ☐ PSDレイヤー書き出しができるペイントソフトがあるか
- ☐ デザインは初モデル向けにシンプルにしたか
- ☐ 隠れるパーツの描き足しをしたか
- ☐ レイヤー名を整理してから読み込んだか
- ☐ 練習モデルを1体作ったか
自分の手で命を吹き込んだモデルで初配信する瞬間は、格別です。焦らず、一歩ずつ。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。ソフトウェアの価格・ライセンス・機能は各公式サイトの最新情報をご確認ください。
