「VTuberを始めたい。でも、アバターってどう作るの? それを配信画面でどう動かすの?」——シリーズ第1弾「始め方から伸ばし方まで」で機材の全体像を解説しましたが、いざ始めようとすると、“具体的な手順”でつまずく人がとても多いです。
この第4弾は、手を動かす実践編。アバター作成から、動かす設定、配信ソフトの準備、画面づくり、テスト配信まで——「ゼロから配信できる状態になる」までを、5つのSTEPで順番に解説します。専門用語はそのつど説明するので、知識ゼロでも大丈夫です。
この記事のゴール:読み終えたとき、「自分のアバターが画面で動き、いつでも配信できる状態」になっていること。費用はほぼ0円〜で組める構成を中心に紹介します。
全体像——配信できるまでの5STEP
複雑に見えるセットアップも、分解すればこれだけです。
- STEP1 アバターを用意する(自分の分身を作る)
- STEP2 アバターを動かす(自分の動きと連動させる=トラッキング)
- STEP3 配信ソフトを準備する(OBSをインストールして整える)
- STEP4 配信画面を作る(アバター・素材・コメントを配置)
- STEP5 テスト配信で確認する(本番前に必ずチェック)
この順番どおりに進めれば、迷わず配信できる状態にたどり着けます。では一つずつ。
STEP1. アバターを用意する
最初の一歩は、自分の分身となるアバターづくり。2D(Live2D)と3D(VRM)の2方式があります。絵が描けなくても、無料で作れる道があります。
ルートA:VRoid Studioで3Dアバターを作る(無料・絵が描けなくてOK)
最もハードルが低いのがこれ。VRoid Studioは無料のキャラ作成ソフトで、パーツを選ぶ感覚で3Dキャラを作れます。
手順の流れ 1. VRoid Studioをインストールして起動 2. 顔・髪・体型・衣装をパラメータやプリセットから選んで調整 3. 髪型やテクスチャ(色・模様)を編集して“自分らしさ”を出す 4. 完成したら VRM形式(3Dアバターの標準フォーマット)で書き出す
この .vrm ファイルが、後のSTEP2で動かす素材になります。まずはこれで作って始めるのが、コストゼロで動き出せる王道です。
ルートB:Live2D(2D)を用意する
表情の作り込みがしやすく、配信VTuberの主流が2Dです。用意の方法は3つ。
- 無料配布モデルを使う:まず試したい人向け。コストゼロ
- イラスト+Live2D化を依頼する:オリジナルが手に入る。費用は数万円〜
- 自分で作る:イラストを描き、Live2D Cubismでモデリング。自由度最大だが学習コスト高
完成した2Dモデルは、STEP2で VTube Studio という定番ソフトに読み込んで動かします。
どちらを選ぶ?
- とにかく今すぐ・無料で始めたい → ルートA(VRoid/3D)
- 表情豊かな“いわゆるVTuber”の見た目にしたい → ルートB(Live2D/2D)
迷ったら、まずVRoidで作って動かしてみる。続けられると確信してから、オリジナルのLive2Dに投資する——これが失敗しない順番です。
STEP2. アバターを動かす(トラッキング)
アバターを「自分の表情・動き」に連動させる設定です。これを トラッキング と呼びます。
3D(VRM)を動かす場合
.vrm ファイルを、トラッキングソフトに読み込ませます。代表的なのは:
- VSeeFace:定番。Webカメラで顔の動きを取り込める
- Warudo:高機能。3D空間や演出にこだわれる
- VMagicMirror:カメラなしでも、キーボード・マウス操作から自然な動きを生成できるのが特徴
基本の流れ
1. ソフトを起動し、作った .vrm を読み込む
2. Webカメラ(またはiPhone)を接続し、トラッキングを開始
3. 自分が動くと、アバターが連動して動くことを確認
4. 感度・補正を調整して、自然な動きにする
精度を上げたいなら:iPhone(Face ID搭載機)を使うと顔トラッキングの精度が大きく上がります。専用アプリでiPhoneのカメラをトラッキング元にする方法があり、表情がぐっと豊かになります。
2D(Live2D)を動かす場合
VTube Studio が定番です。
- VTube Studioを起動し、Live2Dモデルを読み込む
- Webカメラ、またはiPhoneのカメラでトラッキング開始
- まばたき・口の動き・顔の傾きが反映されることを確認
- パラメータを調整して、自分の表情に馴染ませる
重要:背景を“透明”にして出す
配信では、アバターだけを切り抜いて、ゲーム画面などの上に重ねます。そのために背景を透過(透明)させる設定が必要です。
- 多くのトラッキングソフトには、背景を透明にする出力機能(透過出力やSpoutという仕組み)がある
- それが使えない場合は、背景を単色(緑など)にして、後でOBS側で“その色を透明にする”(クロマキー)方法を使う
この「透過で出す」ができると、STEP4で一気に“それっぽい”画面になります。
STEP3. 配信ソフト(OBS)を準備する
アバター・ゲーム画面・コメント・BGMを1枚の画面に合成し、配信・録画するソフトが OBS Studio(無料・事実上の標準)です。
インストールと基本概念
OBSには2つの基本概念があります。最初にこれだけ押さえれば十分。
- シーン:1つの「画面の構成」。例=「待機画面」「配信中」「終了画面」を別々のシーンとして作り、切り替える
- ソース:シーンに乗せる“部品”。アバター、ゲーム画面、画像、テキスト、コメント、BGMなど
アバターを取り込む
STEP2のトラッキングソフトの映像を、OBSに取り込みます。
- OBSで「ソースを追加」→ ウィンドウキャプチャ(または対応する取り込み方法)を選ぶ
- トラッキングソフトの画面を指定
- 背景が透過されていればそのまま、単色背景ならクロマキー(色を透明にする)フィルタを適用
- アバターのサイズ・位置を調整
ゲーム画面を取り込む(ゲーム配信の場合)
- 「ソースを追加」→ ゲームキャプチャ または ウィンドウキャプチャ でゲーム画面を取り込む
- アバターと重ならないよう配置を調整
音声(マイク)の設定——ここが最重要
第1弾でも強調しましたが、視聴者が一番離脱するのは“聞き取りにくい音声”です。
- OBSの「音声ミキサー」でマイクが認識されているか確認
- 音量レベルを調整(大きすぎて割れない、小さすぎて聞こえない、の中間。メーターが緑〜黄の範囲に収まるように)
- マイクにノイズ抑制フィルタを適用すると、環境音が減ってクリアになる
- BGMを流すなら、マイクより小さく。声が埋もれないように
音声を“もう一段”良くするコツ
音声は、ほんの少しの工夫で、グッと聞きやすくなります。
- マイクとの距離を一定に:近すぎると割れ、遠いとこもる。拳1つ分くらいを目安に
- ポップガード/少し斜めから話す:「パピプペポ」の破裂音(ポップノイズ)を防ぐ
- モニタリング:自分の声をイヤホンで聞きながら配信すると、異常にすぐ気づける
- ノイズ源を切る:エアコン・PCファン・通知音など、環境ノイズを減らす
- コンプ・リミッター(慣れたら):音量を均一にし、急な大声の割れを防ぐ
「高いマイクを買う」より先に、距離・環境・モニタリングを整えるほうが、効果が大きいことも多いです(→ 機材選び(第11弾)・声づくり(第23弾))。
STEP4. 配信画面を作る
ここで“見た目”を整えます。情報を詰め込みすぎず、見やすさ優先が鉄則です。
3つの基本シーンを用意する
- 待機画面(開始前):「まもなく始まります」の画面。BGMと告知を表示
- 配信中:アバター+ゲーム/トーク+(コメント表示)
- 終了画面:「ご視聴ありがとうございました」+次回予告やSNS告知
この3つがあるだけで、配信が一気にプロっぽくなります。
素材を集める
- フリー素材:枠・背景・BGM・効果音は、利用規約を守れば無料素材を活用できる(商用利用・配信利用の可否は必ず確認)
- 依頼する:オリジナルの配信画面(オーバーレイ)を制作者に依頼すると、世界観が統一されて“自分だけの画面”になる
- 最初はフリー素材で十分。こだわるのは続けられると分かってから
コメント表示・アラートを入れる
- コメント表示:視聴者のコメントを画面に出すと、後から見る人にも盛り上がりが伝わる
- アラート:フォロー・メンバー登録・投げ銭があったとき通知を出す。配信に“反応”が生まれて楽しくなる
レイアウトの考え方——どこに何を置く?
配信画面のレイアウトは、「見やすさ」が最優先。基本の配置を。
- アバター:主役。隅に置くより、ある程度の存在感を。ゲーム配信ならゲーム画面の邪魔にならない位置に
- ゲーム/メイン画面:中央〜大きめに。視聴者が一番見たいもの
- コメント欄:見やすい位置に(端など)。配信の盛り上がりが伝わる
- 配信者名・SNS:小さく隅に。初見が「誰の配信か」分かるように
詰め込みすぎると、ごちゃついて見づらくなります。「主役を立て、余白を残す」のが、プロっぽく見えるコツです(デザインは → ビジュアルデザイン(第16弾))。
STEP5. テスト配信で確認する
いきなり本番は禁物。必ずテストしてから公開します。
非公開でテスト録画/限定公開する
- OBSで録画して、自分の目と耳で確認する。または限定公開でテスト配信する
- スマホとPCの両方で見え方をチェックすると、視聴者目線の問題に気づける
テストチェックリスト
- ☐ 音声:音量は適切か、ノイズはないか、BGMで声が埋もれていないか
- ☐ アバター:トラッキングは破綻していないか、サイズ・位置は適切か
- ☐ 遅延・カクつき:映像が重くないか(重ければ画質設定を下げる)
- ☐ 映り込み事故:画面に通知・本名・個人情報が映っていないか(第3弾「メンタル・運営」の身バレ対策を参照)
- ☐ 各シーンの切り替え:待機→配信中→終了がスムーズに動くか
- ☐ コメント・アラート:正しく表示されるか
このチェックをクリアすれば、もう配信できる状態です。
配信設定(画質・ビットレート)の目安
OBSの配信設定は、最初は迷うところ。考え方の目安です(環境・プラットフォームで最適値は変わります)。
- 解像度・フレームレート:高画質ほど重くなる。PCや回線がつらいなら、解像度やfpsを下げる
- ビットレート:画質を左右するが、回線の“上り速度”に見合った値に。高すぎると配信が途切れる
- エンコーダ:GPUを使うハードウェアエンコードにすると、PCの負担が軽くなることが多い
- 「カクつくなら、まず下げる」:高画質より、安定して配信できることが優先
最初から最高画質を狙わず、「自分の環境で、滑らかに配信できる設定」を見つけましょう。詳しいトラブル対処は → トラブルシューティング(第25弾)。
つまずきやすいポイント集
実践でよくある“ハマりどころ”を先回りで。
- アバターの背景が透明にならない → トラッキングソフトの透過出力設定、またはOBSのクロマキーフィルタを確認
- マイクの音が入らない/小さい → OBSの音声ミキサーでデバイス選択と音量を確認。PC側の入力設定も確認
- 映像が重い・カクつく → 配信の画質・フレームレート設定を下げる。重いゲームならPCスペックの問題も
- トラッキングがガクガクする → 部屋を明るくする(暗いと顔認識が不安定)、カメラの位置を正面に、iPhoneトラッキングに切り替える
- アバターとゲーム画面が重なる → ソースの配置・サイズを調整、レイアウトを再設計
“2回目以降”をラクにする——設定を保存・テンプレ化
一度セットアップしたら、次回からはラクに始められるよう整えておきましょう。
- OBSのシーン・ソースは保存される:一度作れば、次回もそのまま使える
- プロファイル・シーンコレクション:配信タイプ別(雑談用・ゲーム用)に設定を分けておくと切り替えが楽
- 配信前ルーティンをチェックリスト化:「マイクON → トラッキング起動 → シーン確認 → 告知」など(→ 時間術(第8弾))
最初のセットアップは大変ですが、それは“一度きり”の投資。2回目以降は、起動して数分で配信できるようになります。
いざ、配信を始める——プラットフォームへの接続
OBSの準備ができたら、最後に配信先(YouTube等)とつなぎます。
- 配信プラットフォームと連携する:OBSの設定で配信先を選び、アカウントを連携(またはストリームキーを設定)
- 配信タイトル・サムネを設定:何の配信かが分かるように(→ サムネ&タイトル(第55弾))
- 公開前にテスト:限定公開やテスト配信で最終確認してから公開すると安心
- 「配信開始」を押す:これで本番。最初はドキドキしますが、大丈夫
接続まわりの手順はプラットフォームごとに違うので、公式ヘルプもあわせて確認しましょう。一度つないでしまえば、次回からはボタン一つで配信を始められます。初配信の心構えは → 初配信ガイド(第36弾) もどうぞ。
まとめ——「動く分身」を手に入れたら、あとは出すだけ
長く見えたかもしれませんが、やることはシンプルです。
- アバターを作る(VRoidで無料/Live2Dで本格)
- 動かす(トラッキングソフト+カメラ、透過で出す)
- OBSを準備(シーンとソース、音声を整える)
- 画面を作る(3シーン+素材+コメント/アラート)
- テストして確認(チェックリストをクリア)
ここまで来れば、あなたはもう「動く分身」を手に入れています。あとは——完璧を待たずに、最初の配信を出すこと。最初は誰でも下手で、それが普通です。出して、見返して、直す。その回転数が、あなたを伸ばしていきます。
セットアップは“スタートライン”。ここからの「伸ばし方」は第1弾、「収益化」は第2弾、「続ける守り」は第3弾にまとめてあります。あわせてどうぞ。
あなたの最初の配信を、楽しみにしています。
