活動を続けてファンが増えてくると、企業から「PRしてほしい」「コラボしたい」という声がかかるようになります。企業案件は単価が大きく、新しい層にも知られる好機。一方で、受け方を間違えると、積み上げた信頼を一度で失うリスクもあります。
この第14弾は、収益化ガイド(→ 第2弾)で触れた企業案件を、営業・受注の実務として深掘りします。案件の取り方、自己紹介資料(メディアキット)の作り方、料金の考え方、そして守るべきルールまで。「待つ」だけでなく「自分から動く」ための知識です。
対象:ある程度ファンがついてきて、案件を視野に入れ始めた人。まだ規模が小さいなら、まず伸ばし方(第5弾)を優先するのが近道です。
Part 1. 企業案件の種類
ひとくちに案件と言っても、内容はさまざまです。
- PR配信・PR動画:商品・サービスを紹介する
- 商品紹介・レビュー:使ってみた感想を伝える
- ゲーム案件:新作ゲームをプレイ・宣伝する
- イベント出演:オンライン/オフラインのイベントに登場
- コラボグッズ・コラボ商品:企業と一緒に商品を作る
- アンバサダー・長期契約:継続的にブランドを応援する
- ボイス提供・ナレーション:声の仕事
案件によって、必要な準備も報酬も大きく変わります。
Part 2. 案件を得る2つのルート
ルート1:声がかかる(受け身)を増やす
多くの案件は「企業からの打診」で始まります。声がかかりやすくするには:
- 活動を継続し、数字とファン層を育てる(土台がすべて)
- 連絡先(問い合わせ窓口)を分かりやすくしておく(プロフィール・概要欄)
- メディアキットを用意しておく(Part 3)。打診時に話が早い
ルート2:自分から動く(能動)
待つだけでなく、自分から提案・応募することもできます。
- 案件募集・マッチングサービスに登録する
- 好きな企業・商品に、丁寧に提案する
- 事務所所属なら、案件獲得のサポートを受けられることも
受け身の土台を厚くしつつ、能動の窓口も開けておく——これが案件を増やす基本です。
Part 3. メディアキット(自己紹介資料)の作り方
メディアキットとは、企業に自分を紹介するための資料です。これがあると、打診時に「どんな人で、どんな実績があるか」が一目で伝わり、話がスムーズに進みます。
載せるべき項目
- プロフィール:名前、コンセプト、活動歴、キャラクター
- 活動実績の数字:チャンネル登録者、平均同接、再生数、SNSフォロワー(盛らず正直に)
- ファン層:年齢・性別・興味の傾向(分かる範囲で)
- 得意な配信・強み:何の人か、どんな企画ができるか
- 過去の実績:これまでの案件・コラボ(あれば)
- 対応できる案件の種類
- 連絡先:問い合わせ方法
見せ方のコツ
- 正直な数字を載せる:盛った数字は後で必ずバレ、信頼を失う
- 読みやすく・簡潔に:1〜数ページにまとめる
- 自分の“強み”を明確に:数字が小さくても「濃いファン」「特定層に強い」は価値
- 定期的に更新する(数字は変わる)
Part 4. 料金の考え方
「いくらで受ければいいか」は、多くの人が悩むところです。
料金を左右する要素
- 規模:登録者・再生数・影響力
- 工数:準備・配信時間・動画の長さ・編集量
- 利用範囲:一度きりか、二次利用(企業が動画を転載)するか
- 拘束:イベント出演など時間的拘束
大切な姿勢
- 安請け合いしない:相場より極端に安い価格は、自分も業界全体も消耗させる
- 無料案件は慎重に:「宣伝になるから」と無償で受けすぎない。価値に見合う対価を
- 見積もりは明確に:何が含まれ、何が追加かを提示する
- 不安なら、事務所や経験者に相談する
自分の時間と影響力には、正当な価値があります。それを安売りしないことも、プロとしての姿勢です。
Part 5. 案件を受けるときの判断基準
すべての案件を受ければいい、わけではありません。
受けるか迷ったら
- ファン層と合うか:視聴者が興味を持つ商品・サービスか
- 本当に良いと思えるか:自分が推せないものを宣伝すると、熱意のなさが伝わる
- 活動の世界観を壊さないか
ファンの信頼は、何よりの資産。中身を伴わない宣伝や、ファンに合わない案件は、たとえ報酬が良くても長期的には損をします。断る勇気が、ブランドを守ります。
ステマは絶対にNG——「広告」は明示する
これは法律にも関わる重要事項です。日本では、広告であることを隠して宣伝するステルスマーケティング(ステマ)は規制対象です(景品表示法)。企業案件・PRは、「広告」「PR」「提供」であることを明確に表示する必要があります。
- 配信・動画・投稿で「これはPR/提供です」と分かるようにする
- 「#PR」などの表記を、見えにくくしない
- 隠すことは、法律違反であると同時に、ファンへの裏切りになる
正直に「PRです」と伝えても、良い案件・良い紹介の仕方であればファンは離れません。むしろ誠実さが信頼を深めます。
Part 6. 契約・進行で確認すること
案件は「契約」です。曖昧なまま進めず、条件を確認しましょう。
- 報酬と支払い時期
- 納期・スケジュール
- 成果物の内容(配信何分、動画の長さ、投稿数など)
- 二次利用:企業が動画・画像を転載・広告利用するか、その範囲
- 修正回数・確認フロー
- キャンセル時の扱い
- PR表記の取り決め
- NG事項(言ってはいけないこと、競合との関係など)
これらを書面で確認し、不明点は受注前に質問する。気持ちよく仕事をするための、お互いの約束です。
Part 7. 案件を“次”につなげる
一度の案件で終わらせず、関係を育てましょう。
- 丁寧に、期待以上の仕事をする:次の依頼やリピートにつながる
- 実績としてメディアキットに追加する(公開可否は確認)
- 良い企業との関係は、長期契約・アンバサダーへ発展することも
- 報酬だけでなく「一緒に良いものを作れたか」を大切に
Part 8. 小さな規模でも案件は取れる
「自分なんてまだ規模が小さいから……」と諦める必要はありません。企業が見ているのは、登録者数だけではないからです。
- エンゲージメント(熱量):登録者が少なくても、コメントやファンの反応が濃ければ価値がある
- 特定層への強さ:「○○好きに刺さる」というニッチな影響力は、その商材の企業にとって魅力
- 世界観・ブランドとの相性:数字より「自社に合うか」で選ぶ企業も多い
だからこそ、規模が小さいうちからメディアキットで「強み」を言語化しておくことが効きます。「登録者は○人だが、××層に強く、コメント率が高い」——こうした“数字以外の価値”を伝えられる人は、小規模でも案件につながります。
そして実績は、小さな案件から積み上がります。最初の一件を誠実にこなすことが、次の大きな案件への道になります。
案件の進行フロー【打診〜納品〜請求】
初めての案件は、流れが分からず不安なもの。一般的な進行を知っておけば、落ち着いて対応できます。
- 打診・問い合わせ:企業から連絡が来る(またはこちらから提案)。まず内容・予算感をすり合わせる
- 条件のすり合わせ:報酬・成果物・納期・PR表記・二次利用などを確認(曖昧な点は質問)
- 契約・発注:条件を書面(メール・契約書)で確定。ここまでで合意を“形”にする
- 制作・配信:合意した内容で、PRを明示して実施
- 確認・修正:企業のチェックが入る場合は、合意した範囲で対応
- 納品・報告:成果物(配信URL・数値レポートなど)を提出
- 請求・入金:請求書を発行し、支払いを受ける
特に3の「条件を書面で確定」を飛ばさないこと。口頭やDMの曖昧な合意のまま進めると、後でトラブルになりがちです(お金まわりの基礎は → 法務(第18弾))。
受けてはいけない案件の見分け方
すべての案件が、受けるべき良い案件とは限りません。次のようなものは、慎重に・あるいは断る判断を。
- ステマを求められる:「広告だと言わないで宣伝して」はNG。法律違反であり、信頼を失う(→ Part 5)
- ファン層・世界観に合わない:無理に推すと熱意のなさが伝わり、ファンの信頼を損なう
- 条件が極端に不利・不明瞭:報酬が見合わない、利用範囲が無制限、契約内容が曖昧
- 誇大・不誠実な商材:効果を偽る、トラブルの多い商品など。紹介した自分の信用に跳ね返る
- 急かして契約を迫る:考える時間を与えない相手は要注意
「報酬が良いか」より「ファンに胸を張って勧められるか」。この基準を持っていれば、長期的に信頼を守れます。断ることは、逃げではなく、ブランドを守る経営判断です。
まとめ——案件は「信頼」を換金する仕事
企業案件は、あなたが積み上げた信頼と影響力を活かす機会です。
- 2つのルート:受け身の土台を厚く+能動の窓口も開ける
- メディアキット:正直な数字+強み+連絡先で、話を早く
- 料金:規模・工数・利用範囲で。安売りしない
- 判断基準:ファン層と合うか、本当に推せるか
- ステマNG:PR・広告は必ず明示(法律+信頼)
- 契約:報酬・納期・二次利用・PR表記を書面で
企業案件チェックリスト
- ☐ メディアキットを用意したか(正直な数字で)
- ☐ 問い合わせ窓口を分かりやすくしたか
- ☐ ファン層に合う案件か見極めたか
- ☐ 「PR/提供」を明示する取り決めをしたか
- ☐ 報酬・納期・二次利用を契約で確認したか
信頼を大切にしながら、案件を活動の力に変えていきましょう。
